川瀬和也 研究ブログ

宮崎公立大学で教員をしています。専門は、(1)ヘーゲル、(2)行為の哲学(3)プラグマティズム。英語圏のいわゆる分析系のヘーゲル研究の成果を取り入れながら、ヘーゲルの議論の再構成を目指しています。主要著作:論文「ヘーゲル『大論理学』における絶対的理念と哲学の方法」で日本哲学会若手研究者奨励賞受賞。共著に『ヘーゲルと現代思想』(晃洋書房・2017年)ほか。お仕事のご依頼・ご質問はフォームへ→https://goo.gl/forms/klZ92omOgEvsjcCi1

初回授業とアイスブレイク

私が勤務する宮崎公立大学では、来週月曜から新学期の授業が始まります。多くの教員の新学期は、この初回授業の準備とともに始まります。
 
この初回の授業の計画にあたって、何から手を付ければよいのでしょうか。もちろん書籍などを当たればよりきちんとした解説がありますが、私が「とりあえず」やることにしているのは、「アイスブレイク」でwebを検索して、自分の授業に合ったアイスブレイクを探すことです。この一手から初められるかどうかで、授業準備の効率と初回授業の質は大きく変わるはずです。
 
初回授業には、ほぼ全ての授業に共通する目的・目標があります。それは、「授業の内容・やり方を知ってもらう」ことと、「学生の緊張をほぐす」ことです。これに対応して、初回の計画にあたってとりあえずやるべきことは、「シラバスの内容を確認する」ことと、「授業に合ったアイスブレイクの方法を考える」となります。
 
前者のシラバスについては、あえて私が説明するまでもないでしょう。これからの授業の進め方を説明しておくことで、学生の履修選択の材料を提供したり、見通しを良くしてモチベーションを高めたり、また、自分が次回以後の授業を進めやすい状況を作ったりすることができます。学生にとっては評価方法が重大な関心事でしょうから、もし可能ならこれについても時間を割いて説明するのが望ましいでしょう。
 
後者についてはどうでしょうか。大学の先生の中には、分野によっては、「アイスブレイク」という言葉を聞いたことがないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。アイスブレイクとは、一般に研修会やワークショップなどで、参加者の緊張を解すことを主目的に行うワークのことです。15回の授業の初回は学生も緊張しています。初回にこのワークをを行って学生同士の距離感や学生と教員の距離感を縮めておけば、次回以後の授業を円滑にすすめることが可能になります。
 
とはいえ、緊張をほぐすためのワークを自分で一から考えるのは至難の業です。というわけで、「『アイスブレイク』と検索窓に打ち込んでみる」ことが、最初にやるべきことだということになります。アイスブレイクには、自己紹介にアレンジを加えたオーソドックスなもの、かなりくだけた遊びのようなもの、授業のテーマに関連付けることが可能なものなど、様々なタイプの物があります。その中から、受講人数、科目の内容、時間的リソース、準備の都合などを考慮して、自分の授業に適したものを選んでゆくことになります。
 
ただ「検索しろ」とだけ書くのも不親切なので、役に立つサイトを二つご紹介しておきます。いずれも、豊富な事例が紹介されており、授業に合うものもきっと見つかるはずです。
 
 
 
ただし、大学生の場合、あまりに授業の内容と関連のない子どもの遊びのようなゲームを選ぶと、場が白けてしまう可能性もあるでしょう。うまく授業と関連付けられるようなワークを選ぶことが大切です。演習系の授業であれば、使いやすいのは、自己紹介のワークや、組み分け系のワークでしょう。そのほか、授業内容に関連するようなテーマで学生同士でしりとりをしてもらう、といったこともできるかもしれません。もちろん、身体を動かすことが前提の授業であれば、子どもでもできるレクリエーションのようなワークが適切だということになるでしょう。いずれにせよ、うまくアレンジを加えて、授業内容に関連付けることが重要になります。
 
また、私は、ワークがすんでから、「アイスブレイク」の意義や、ワークの選択の意図について説明するようにしています。学生に自律的な学習者になってほしい、卒業までに研修を受けるだけでなく実施する側のスキルも身につけてほしいという想いからです。また、どんなに適切なワークを選んでも「子どもだまし」「なぜ大学生にもなってこんなことを」というような印象をもつ学生もいると思うので、「種明かし」をすることで、それらの学生のモチベーションの低下を防ぐこともできるのではないかと考えています。
 
というわけで、初回授業の計画時には、数カ月前に提出して忘れかけているシラバスを読みなおすことに加えて、『アイスブレイク』と検索窓に打ち込んでみること、あるいは上でご紹介したしたサイトにアクセスしてみることをおすすめします。