川瀬和也 研究ブログ

宮崎公立大学で助教をしています。専門は、(1)ヘーゲル、(2)行為の哲学(3)プラグマティズム。英語圏のいわゆる分析系のヘーゲル研究の成果を取り入れながら、ヘーゲルの議論の再構成を目指しています。主要著作:論文「ヘーゲル『大論理学』における絶対的理念と哲学の方法」で日本哲学会若手研究者奨励賞受賞。共著に『ヘーゲルと現代思想』(晃洋書房・2017年)ほか。お仕事のご依頼・ご質問はフォームへ→https://goo.gl/forms/klZ92omOgEvsjcCi1

ヘーゲル(再)入門ツアーへのあとがき

ヘーゲル(再)入門ツアー、予想を上回る多くの方々にご参加いただき、誠にありがとうございました。いただいたご質問やその後インターネット等に書いていただいたご感想等、ありがたく拝読しております。この記事では、さらに学びたい人のための文献紹介と…

金杉武司『心の哲学入門』第3章における「表象内容の目的論的説明」への疑問

金杉武司『心の哲学入門』(勁草書房、2007年)は、心の哲学を学びたい人のみならず、哲学を学びたい人に真っ先にすすめたい本の一つです。発行から10年を経て少し古くなってきたところもありますが、まだまだ現役で通用する本でしょう。 心の哲学入門 作者:…

ヘーゲル入門は『歴史哲学講義』から?

ヘーゲル(再)入門ツアー東京編の開催まで2週間を切りました。宣伝を兼ねて、ヘーゲル入門に関する記事を追加したいと思います。 「ヘーゲル哲学に入門するには、まずは岩波文庫にもある『歴史哲学講義』から」。哲学史の入門書や、インターネット上の哲学…

ヘーゲルと観念論(ヘーゲル(再)入門ツアー・予稿その2)

前回の記事で、「正反合」や歴史の目的論だけがヘーゲル哲学ではない、ということをお話ししました。 kkawasee.hatenablog.com では、ヘーゲル理論哲学とは一体何なのか、というのがこの記事のテーマです。 ヘーゲルには方法論しかない? 「弁証法」があまり…

ヘーゲルと弁証法(ヘーゲル(再)入門ツアー・予稿)

ヘーゲル(再)入門ツアーに向けて、ブレストと宣伝を兼ねて、(できればこの先もシリーズで)記事を書いてみたいと思います。 ヘーゲルは「正反合」と言ったか? 高校倫理などの初級の哲学史では、哲学者はキャッチフレーズとともに教えられます。デカルト…

教科書としての哲学系新書レビュー

私は、新書レベルの本を学生に自ら読み進めさせ、それを通じて学習させる科目として、「現代哲学」と「哲学史」を担当しています。LTD話し合い学習法をアレンジした主要、毎学期新書2冊を読み切るペースで授業しています。そこで教科書として使った哲学系新…

「LTD話し合い学習法」のアレンジ事例の共有

「LTD話し合い学習法」について LTD「話し合い学習法」と呼ばれる学習法があります。私の授業では、これをアレンジした手法を「ディスカッション学習」と勝手に呼んで実施しています。この記事では、この手法について事例を共有したいと思います。 「LTD話し…

書評:飯田洋介『ビスマルク』(中公新書, 2015年)

ビスマルクの評伝。近年、堅めの評伝型の新書が多く出ているが、本書は、ドイツ統一の立役者ビスマルクの生涯を扱った一冊である。専門外の新書なので専門家としての批評はできないが、ヘーゲル研究者の視点からみた魅力を記事にしてみる。 本書の面白さは、…

ヘーゲル論理学に分け入る5冊

ヘーゲル研究者で、論理学の重要性を否定する者はいません。しかし、その重要性に比して、ヘーゲル論理学を学ぶ者がよりどころとできる本は驚くほど少ないのが実情です。そこでこの記事では、入門書にこだわらず、少し専門的なものも含めて、ヘーゲル論理学…

ヘーゲルの主要著作、どの訳で読む?

ヘーゲルの著作は出版の事情も複雑で、読む前にこれを整理して押さえるだけでも一苦労です。しかも訳書も複数あり、比較して選択しなければなりません。この記事では、『精神現象学』と『大論理学』に絞って、邦訳を比較していきます。 0.基礎知識 ヘーゲル…

書評:『ワードマップ現代現象学』(新曜社、2017年)

「現象学は、私たちの経験の探求です」と導入される本書は、フッサールからハイデガーを経てメルロ-ポンティやレヴィナスに至る、という旧来の「現象学入門」のスタイルからは大きく逸脱している。目次を眺めればわかるとおり、志向性、存在、価値、芸術等々…

ヘーゲルに挫折しないための5冊

西洋哲学史のなかでもトップクラスのとっつきにくさで知られるヘーゲル。この記事では、ヘーゲル哲学を学ぶための入り口を提案します。この夏、新たな挑戦としてヘーゲルに入門してみてはいかがでしょうか。 1.ヘーゲル哲学入門の難しさ 西洋哲学に興味のあ…

反転授業で学生に初回から予習してもらう工夫

講義内容をビデオ教材で予習させ、授業時間中には演習を行う「反転授業」。この授業形式の問題点として、学生が初めのうちは予習をしてこない、ということが挙げられます。これは映像コンテンツを用いた反転授業に限らず、予習を要求する授業全てに言えるこ…

初回授業とアイスブレイク

私が勤務する宮崎公立大学では、来週月曜から新学期の授業が始まります。多くの教員の新学期は、この初回授業の準備とともに始まります。 この初回の授業の計画にあたって、何から手を付ければよいのでしょうか。もちろん書籍などを当たればよりきちんとした…

『インタラクティブ・ティーチング』の思い出(と、宣伝)

書籍『インタラクティブ・ティーチング:アクティブ・ラーニングを促す授業づくり』が、去る2月に河合出版より発売されました。私は第3章「学習の科学」を執筆しました。 インタラクティブ・ティーチング―アクティブ・ラーニングを促す授業づくり 作者: 栗…

徳島大学を(5ヶ月前に)退職しました

既に5ヶ月が経過してしまいましたが、昨年度いっぱいで、約1年半にわたってお世話になった徳島大学を退職し、4月から宮崎公立大学に助教として赴任いたしました。 わざわざ「退職しました」というタイトルにしたのは、よくIT系の方が書いている「退職エン…

哲学史研究とイノベーション

来週、10月22日(木)から、徳島大学教養教育院(仮)設置準備室・講師の北岡和義先生が中心となった、「徳島大学イノベーションチャレンジ」(TIC)という教育プログラムがスタートします(TICのFacebookページはこちら。)。これに先立ち、15日(木)は、…

ヘーゲル研究文献レビュー:Paul Redding, "Hegel and Peircean Abduction"

基本情報 著者:Paul Redding タイトル:Hegel and Peircean Abduction 発表年:2003 媒体:European Journal of Philosophy 11:3, pp.295-313 要約 S. パースの「アブダクション」から説き起こし、カントからヘーゲルへと展開された判断と推論についての議…

FD関連文献レビュー:Joel Michael (2007), Faculty Perceptions About Bariiers to Active Learning

基本情報 著者:Joel Michael 発表年:2007 タイトル:Faculty Perceptions About Bariiers to Active Learning 媒体:College Teaching, 55:2, 42-47, DOI: 10.3200/CTCH.55.2.42-47 要約 自身のワークショップで収集した質問票のデータをもとに、アクティ…

アクティブ・ラーニングの目的とは

私が所属する徳島大学は、大学教育再生加速プログラムのテーマI「アクティブ・ラーニング」の採択を受け、アクティブ・ラーニングの普及に取り組んでいます。こうした背景もあり、職務を行う中で、先生方にアクティブ・ラーニングをおすすめする、という機会…

4月の活動記録

文章を書くスイッチが入ったので、続いて4月についても更新します。4月は3月と逆に、研究に軸足をおいた月になりました。業務の方は、就職して初めての新年度なので、なんとなくふるまい方を探りながらの月になりました。 研究に軸足を置いた、と書きまし…

3月(!)の活動記録

本当に今更ですが、先生方や学生たちに「振り返りが重要だよ」と強調する機会が多かったので、自分も振り返らなければと思い、3月の活動記録を書いておきます。 3月はFD活動に軸足を置いた月でした。 私が所属する徳島大学では、「大学再生加速プログラム」…

ファカルティ・ディベロップメントの概念

私の職場は、いわゆるFDセンターである。「FD」とは、faculty developmentの略である。文部科学省によるややこしい定義もあるが、さしあたり、「教育」を切り口に大学をよくしていく活動、として理解しておけばよいだろう。さて、奇妙なことに、この語には、…